コラム

「輝く、四国の日々」

1988年に4台のモーターサイクルと2台のクルマで出掛けたパリ・ダカール。
なんとかボクはダカールの海岸にたどり着いたが、4台のMOTOはアフリカステージに入ったとたんに消えてしまった。ボクはとんでもなく反省した。まずルートブックホルダーを取りつけて見ながら走るという行為の経験をさせていなかった。ナビゲーションと一口に言っても、単に道を辿るためのすべだと思っていた。ビバークでは、困難な夜を過ごさなければならなかったし、食事やさまざまなものの調達も過酷な時代だった。よく言えば「冒険の時代」悪く言えば「競技以前の問題」だったのだ。

その帰国の便で考えたのは、いまの日本で不足しているのはこのエクスペリエンスじゃないか。只々その思いで走り出した。そんな経験を積むためのラリーなんてことを実現させられるのか。そしてふと気づいたのは、四国88箇所を巡るという困難な旅。以来1989年から2020年まで紡いできたこのTBIというフォーマット。ただただ過酷に道を辿るだけの旅だったなら、きっともうとっくに挫折していたかもしれない。試走していて、本番のラリーの最中にも、まるでテネレ砂漠や、モーリタニアの砂丘で感じたと同じように輝く景観に心が躍ったんだ。そう、TBIは単にそういったもののオルタナティヴではなく、輝く四国を愛でる旅だったのだよ。