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No.54
2002/12/17

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グランツーリズム 自由を確認する旅

■今回もまた、チェコ共和国で開催されたインターナショナルシックスデイズエンデューロの取材行からの話です。ヨーロッパをクルマで走っていれば、意識してひとところにとどまろうとしない限り、さほどの距離を走らずに国境というものに行き当たります。アメリカでも北に走っているうちにカナダ国境に行き当たり、南に走ればまずメキシコ国境に行き当たることになったりますが、日本の場合には曲がらずになるべく真っ直ぐ走ったとしても道は日本を出ようとはせずに、海岸をへばりつくように進みます。クルマで走ってもオートバイで走っても、国境を意識するということはありません。道はこの国の中をぐるぐると回るためだけにあるわけです。

■ドイツ〜ポーランド国境、ポーランド〜チェコ国境、チェコから再びドイツへと戻ってくる過程で3度国境をまたぐわけですが、特になにがあるというわけではなく、また緊張させられるわけでもありません。地勢的な差異が大きいわけではなく、国家間が強い緊張状態におかれているわけでもない。まして、ぼくたちが持っているパスポートは、地下ではもっとも高く取引されるとさえ言われる日本国旅券です。それでも国境を自在に往来できるということにほっとさせられるのはなぜでしょう。それはたぶん、自由に移動することのできる権利が決してゆるぎないなにかに保証されているものではないということを、ぼくにも受け継がれているだろう、人類としての連続した無意識が記憶しているからなのだろうと思ったりしました。

■そういえば初めてパスポート=旅券なるものを手にした時、あまりいい思いをしなかったことも、思い出しました。「この国を出て自由に旅行する権利は、もともとぼくにはなかったのだ。」という解釈をしてしまったからです。何者かに許されてぼくはこの国から一歩出ることが可能になったのだ、という、まあこれはソートーなひねくれた考えかもしれませんが…。

■移動する自由。自在に往来することが、ゆるぎないなにかに保証された自由ではないということ。最近はニュースによって、多くの人がそのことを思い知らされていますが、割拠の長い歴史を文字通りせめぎあって生きてきた、生き抜いてきた欧州の人々には、さらに強い記憶として流れているのかもしれなないなぁ、と、あくまで「ぼーっ」としてですが、考えてみたり。だから、彼らはやたらと陸路ユーラシア渡り、極東まで無数の国境を渡ってきたりするのかな、その行為はもしかすると「自由であることの確認作業」なのかもしれない。なんて、これは東京のGS仲間である内田さんの、ちょっと受け売りだったかも…。

■ドイツ〜ポーランド〜チェコ、そして再びドイツへと続いた旅行は、スケールは小さいとはいえ、やはりちょっとした西洋の旅でした。なにかちょっとした不都合があると「ポーランドに行けば…」あるいは「チェコなら…」。最後には「早くドイツに戻ろう」ということになって、ドイツに行けばいったで「チェコのビールは美味くて安かった」とグチる。大人になるとこんなふうに楽しい遊びができるんだなぁ、と、しみじみよかったと思うのですが「ハルキさん、アルザス料理ってのを食べにフランスに行きませんか」という治武カメラマンほどには、ノンキではないぼくだったのでした。

●写真 / チェコ〜ドイツ国境で…

 

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